男性の淋菌感染症とは?
淋菌感染症は、性感染症(STI)の一つで、主に粘膜の接触を通じて感染が広がります。この感染症は、男性と女性の両方で発症しますが、症状や重篤度に性差があります。
原因となる淋菌(Neisseria gonorrhoeae)は、人間の体内にしか生息しない細菌です。淋菌は、湿った環境を好み、特に粘膜組織で増殖します。このため、尿道、子宮頸管、直腸、喉頭などが主な感染部位となります。また、細菌は性行為を通じて他者に簡単に伝播しますが、乾燥や紫外線には弱く、環境中では長時間生存できません。
淋菌の感染経路
淋菌感染症の主な感染経路は以下の通りです:
- 性行為(膣性交、肛門性交、口腔性交)
粘膜同士の接触で感染が成立します。 - 産道感染
感染している母親から新生児に伝播し、淋菌性結膜炎を引き起こします。 - 稀なケース
非常に稀ですが、感染者の体液がついた手指や器具を介して粘膜に触れることでも感染する場合があります。
淋菌感染症の症状
淋菌感染症の症状は、感染部位や性別によって異なり、症状がない場合もあります。このため、無症状の感染者が感染を広げる一因となっています。
男性の症状
男性では症状が現れやすく、特に尿道炎として認識されることが多いです。
典型的な症状
排尿時の痛み
尿道の粘膜に炎症が起きるため、排尿時に焼けるような痛みを感じます。痛みの強さは個人差がありますが、初期段階から自覚しやすい症状です。
尿道からの膿状分泌物
黄色や緑色の膿が尿道から出るのが特徴です。これが初めての受診理由となることが多いです。
放置した場合の影響
精巣上体炎
感染が尿道から精巣に広がると、精巣上体に炎症が起こり、強い痛みや腫れが生じます。
不妊症
精管が閉塞し、精子の通り道が狭くなることで不妊を引き起こす可能性があります。
次に、女性の症状を解説します。あなたが淋菌感染症の場合、パートナーに移している可能性が非常に高くなります。
女性の症状
女性では、約半数が無症状で経過するため、感染が気づかれずに進行することがあります。
典型的な症状
子宮頸管炎
おりものが増えるのが特徴です。黄色や緑がかった膿状の分泌物が見られ、特有の臭いを伴う場合もあります。
排尿時の痛み
男性と同様、排尿時に痛みや灼熱感が生じる場合があります。
下腹部痛
感染が子宮や卵管に波及すると、下腹部の鈍い痛みや不快感が出ます。
放置した場合の影響
骨盤内炎症性疾患(PID)
淋菌が子宮や卵管、卵巣に感染を広げることで発症します。PIDは不妊症や子宮外妊娠のリスクを高める重大な合併症です。
慢性的な骨盤痛
PIDが慢性化すると、日常生活に支障をきたす持続的な痛みが発生します。
その他の部位の症状
咽頭感染(口腔性交による感染)
喉の痛みや違和感がありますが、無症状のことも多いです。軽度の咽頭炎として誤認されることがあります。
直腸感染(肛門性交による感染)
肛門の痛みや不快感が現れ、排便時に悪化します。分泌物が増えたり、軽い出血が見られることもあります。
新生児結膜炎
母親から感染した場合、生後数日以内に結膜が腫れ、目やにが大量に出ます。治療が遅れると失明のリスクがあります。
淋病の診断
淋菌感染症の診断は、感染部位に応じて行われる以下の検査で確定されます:
培養検査
感染部位から分泌物や細胞を採取し、淋菌を培養して特定する方法です。高い精度を持つ標準的な検査ですが、結果が出るまでに数日を要します。
核酸増幅検査(NAATs)
最も感度が高い検査方法で、尿や分泌物から淋菌のDNAを増幅して検出します。この方法は迅速で正確なため、現在の診断で広く用いられています。
顕微鏡検査
男性の場合、尿道膿を採取して顕微鏡で淋菌の存在を直接確認します。迅速に結果を得られるため、緊急の診断が必要な場合に有効です。
淋病の治療
淋菌感染症は適切な抗生物質治療により治癒が可能です。ただし、近年では淋菌が抗生物質に対する耐性を示すケースが増えており、治療法が複雑化しています。
標準治療
1. セフトリアキソン**(注射薬)
- 淋菌治療の第一選択薬で、1回の投与で効果を発揮します。
2. **アジスロマイシン**(経口薬)
- 淋菌以外の可能性のある性感染症(クラミジアなど)をカバーするために併用されます。
治療後の注意
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再検査を行い、治療が成功したことを確認する必要があります。
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性的パートナーの同時治療も重要です。未治療のパートナーがいると再感染のリスクが高まります。
淋病の予防策
コンドームの使用
性行為時にコンドームを適切に使用することで感染リスクを大幅に減らせます。
定期的な検査
性感染症のリスクが高い生活習慣を持つ方(複数のパートナーがいる、性的暴露の可能性がある場合など)は、定期的に検査を受けることが推奨されます。
性感染症の啓発
淋菌感染症を含む性感染症に関する正しい知識を持ち、感染のリスクを軽減する行動を心がけることが大切です。
淋菌感染症は早期発見と治療が肝心です。不安な症状がある場合や感染のリスクがある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。